世界各国のイールドスプレッド比較(2018年4月末)


2018年4月末の世界各国のイールドスプレッドを見ていきます。
(過去記事:世界各国のイールドスプレッド比較(2018年3月末)

※イールドスプレッドは株式のバリュエーションを判断する指標のひとつです。
債券同士の利回り格差や株式と債券の利回り差を指し、それぞれの利回りを比較することで相対的な割高感・割安感を判断する指標のひとつとなる。
債券同士の場合は、一般的に長期国債を基準に、残存期間や信用度から債券利回りの割安・割高を判断する。債券と株式の場合は、長期国債の利回りから配当利回り(=年間配当金÷株価)や株式益回り(=1株利益÷株価)を引いた数値を比較する。
引用元:野村證券「証券用語解説集」


 イールドスプレッド比較(2018年4月末時点)


PER益利回り10年国債
利回り
イールド
スプレッド
中国8.012.50%3.65%-8.85%
シンガポール10.89.26%2.61%-6.65%
ハンガリー10.99.17%2.59%-6.58%
日本15.16.62%0.05%-6.58%
韓国11.28.93%2.71%-6.22%
ドイツ15.06.67%0.56%-6.10%
台湾14.17.09%1.02%-6.07%
チェコ13.87.25%1.73%-5.52%
オランダ16.26.17%0.70%-5.47%
イスラエル13.77.30%1.85%-5.45%
ロシア7.912.66%7.25%-5.41%
スウェーデン17.15.85%0.72%-5.13%
オーストリア17.15.85%0.78%-5.06%
アイルランド16.75.99%0.97%-5.02%
ポーランド12.48.06%3.08%-4.99%
スペイン16.16.21%1.28%-4.93%
フランス18.25.49%0.81%-4.68%
ベルギー18.25.49%0.82%-4.67%
香港15.06.67%2.19%-4.48%
英国17.55.71%1.42%-4.30%
デンマーク21.14.74%0.58%-4.16%
スイス25.23.97%0.09%-3.88%
イタリア17.75.65%1.78%-3.87%
ノルウェー17.85.62%1.88%-3.74%
フィンランド22.64.42%0.71%-3.72%
ポルトガル19.25.21%1.66%-3.55%
カナダ17.15.85%2.31%-3.54%
タイ17.25.81%2.47%-3.34%
オーストラリア16.66.02%2.79%-3.24%
ギリシャ15.16.62%3.84%-2.78%
ニュージーランド21.34.69%2.86%-1.84%
米国21.84.59%2.96%-1.63%
マレーシア19.25.21%4.16%-1.05%
トルコ8.611.63%12.24%0.61%
フィリピン19.75.08%6.20%1.13%
南アフリカ14.86.76%8.19%1.43%
インドネシア18.45.43%6.91%1.47%
メキシコ18.75.35%7.46%2.11%
インド25.63.91%7.77%3.86%
ブラジル20.54.88%9.67%4.79%
※PERははStarCapital AG、10年国債利回りはInvesting.comのデータを使いました。

グラフ化すると以下のようになります。
先月に比べて全体的に割高になってきています。

特に割安なのは中国(-8.85%)、シンガポール(-6.65%)、ハンガリー(-6.58%)、日本(-6.58%)、韓国(-6.22%)です。

割高なのはブラジル(4.79%)、インド(3.86%)、メキシコ(2.11%)、インドネシア(1.47%)、南アフリカ(1.43%)です。

CAPEレシオを使ったイールドスプレッド比較(2018年4月末時点)

次に、益利回りの代わりにCAPEレシオの逆数を使ったイールドスプレッドを比較してみます。イールドスプレッドを計算するときにCAPEレシオを使うのが正しいのかは分かりませんが、PERを使った場合よりも一時的な要因を除けるので併せてチェックしています。

CAPE益利回り
(CAPEの逆数)
10年国債
利回り
イールド
スプレッド
ロシア6.415.63%7.25%-8.38%
チェコ10.010.00%1.73%-8.27%
スペイン13.87.25%1.28%-5.97%
ポーランド12.18.26%3.08%-5.19%
ポルトガル14.66.85%1.66%-5.19%
イスラエル14.46.94%1.85%-5.10%
英国16.36.13%1.42%-4.72%
ドイツ20.24.95%0.56%-4.39%
オーストリア19.65.10%0.78%-4.32%
ノルウェー16.46.10%1.88%-4.22%
シンガポール14.86.76%2.61%-4.14%
ハンガリー15.16.62%2.59%-4.03%
スイス24.94.02%0.09%-3.93%
スウェーデン21.74.61%0.72%-3.89%
フィンランド22.04.55%0.71%-3.84%
フランス21.74.61%0.81%-3.80%
台湾21.24.72%1.02%-3.70%
韓国15.96.29%2.71%-3.58%
日本27.93.58%0.05%-3.54%
オランダ24.04.17%0.70%-3.47%
イタリア19.15.24%1.78%-3.46%
香港18.05.56%2.19%-3.37%
ベルギー24.94.02%0.82%-3.19%
オーストラリア18.35.46%2.79%-2.68%
カナダ21.04.76%2.31%-2.45%
デンマーク34.42.91%0.58%-2.33%
タイ21.44.67%2.47%-2.20%
中国18.35.46%3.65%-1.81%
マレーシア17.05.88%4.16%-1.72%
アイルランド41.92.39%0.97%-1.42%
ニュージーランド23.84.20%2.86%-1.35%
米国29.83.36%2.96%-0.40%
フィリピン20.84.81%6.20%1.40%
インドネシア18.45.43%6.91%1.47%
トルコ10.49.62%12.24%2.62%
ブラジル14.56.90%9.67%2.77%
メキシコ21.64.63%7.46%2.83%
南アフリカ19.15.24%8.19%2.95%
インド23.24.31%7.77%3.46%
ギリシャ-6.3- 3.84%
※CAPEレシオはStarCapital AG、10年国債利回りはInvesting.comのデータを使いました。

グラフ化すると以下のようになります。
CAPEレシオを使った場合だと、先月に引き続きロシア(-8.38%)とチェコ(-8.27%)が群を抜いて割安です。

インド(3.46%)、南アフリカ(2.95%)、メキシコ(2.83%)、ブラジル(2.77%)、トルコ(2.62%)は割高です。

現在、割安だと思われるERUS(iシェアーズ MSCI ロシアETF)の買い増しを続けています。

フラジャイル・ファイブ

経常収支が赤字で成長資金を国外に頼るブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの通貨は「フラジャイル・ファイブ」と呼ばれ、米金融引き締めで下落しやすいそうです。5カ国の株式はイールドスプレッドでみるとどれも割高なので、今後の引き締め局面ではより注意が必要かもしれませんね。

一方、Research Affiliatesの今後10年間の実質期待リターンをみると、ブラジルは6.4%、インドは3.4%、インドネシアは5.4%、トルコは8.9%、南アフリカは4.5%で、全世界(2.4%)や米国大型株(0.2%)よりも高くなっています。特にトルコはロシア(11.2%)に次いで2番目に高いです。
(過去記事:高い実質期待リターンが見込める国の株式ETF
(過去記事:世界各国の時系列CAPEレシオが見られるサイト

Research Affiliatesによると、トルコ株のCAPEレシオの中央値は12.1です。4月末時点では10.4でしたが、5月に入ってから現時点で約10%下落していますし、CAPEレシオだけを見るとかなり魅力的な水準になってきています。
(トルコの10年国債利回りは5月15日の終値で14.26%まで上昇しているので、イールドスプレッドでみると相変わらず割高ですが…)

トルコは慢性的な経常赤字、高インフレ、エルドアン大統領が景気刺激のために利下げを望んでいること、不安定な中東情勢など、懸念点はたくさんありますが、少額だけTUR(iシェアーズ MSCI トルコ ETF)を買ってみてもいいかなと思っています。


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コメント

  1. 参考になる記事、ありがとうございます。いつも楽しみに見ています。
    割高なバリュエーションのブラジル、、インド、メキシコ、インドネシア、南アフリカですが。特にメキシコは株価が割高にもかかわらず最近は株価が下落しています、それ以外の国はここ数年でみると割高な株価が維持されていますね。

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    1. ありがとうございます。
      私もishipponさんのブログで勉強させていただいております。
      (私は海外証券口座を持っていないのでオプションはできませんが…)

      メキシコは最近かなり下落していますね。
      インドやインドネシアは個人的に投資していきたい国なのですが、ずっと割高なバリュエーションが維持されているのでなかなか買うタイミングが掴めないでいます。

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  2. インドやインドネシアは面白そうですよね。私もINDA(インドETF)とEIDO(インドネシアETF)を少額保有しています。
    やはり人口が増加していてい今後成長が見込めそうな国は多少バリュエーションが高くても割高な水準を維持している気がします、株で例えるとグロース株のようです。

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    1. 人口が増加していく国はたしかにグロース株のようですね。
      長期的な成長を考えるとそれほど割高ではないのかなとも思いますが、判断が難しいです。
      VWOなど新興国株ETFは中国・台湾のウェイトが大きいので、労働人口の増加が見込まれる若い国は魅力的なのですが…

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